今回から始まりました「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズ。
表には出てこないような技能実習生事情をお伺いしていきたいと思います。

まずは簡単に猪谷氏の簡単なご紹介です。

株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄  (Inotani Takahide)

大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。


ベトナムの人材輸出について

取材者

この回では「送り出し機関」についてお伺いしたいと思います。

猪谷氏

送り出し機関はベトナム労働省の管轄になります。
ベトナムは国策として人材輸出を行っている国で、元々は除隊された兵隊さんの職業斡旋や外貨稼ぎのためにそのような国策があります。

補足

ベトナムは1980年代以降、労働者の海外送出しを行っており、政府は労働力輸出を経済社会開発政策の一環として位置づけ、派遣労働者の送出数の増加や技能向上、労働者派遣機関等による違法行為の取締り強化などを政策目標として掲げています。

1991年、政府はベトナム労働省に認定された派遣機関が、海外の市場開拓から労働者の派遣前訓練及び派遣から帰国までの管理を担当することや、労働者が送出機関に対して手数料や保証金を支払うことなどを定めました。

1998年には共産党政治局が労働力輸出の促進が重要な国策の一つであることを示す文書を発出し、その中では「労働者・専門家の輸出は、人材育成、雇用創出、労働者の収入・技能の向上、国家のための外貨獲得、及び我が国と諸外国の協力関係の促進に貢献する経済社会活動である」とされています。

参考:(一財)自治体国際化協会

送り出し機関の少し踏み込んだ話

取材者

ベトナムの送り出し機関って実際どうなんですか?

猪谷氏

ベトナム全体の送り出し機関は420くらいあります。
7割くらいは北(ハノイとか)に偏ってます。
マレーシアとか台湾、韓国などへも送り出しを行っています。
許可を取るために政府にお金を…なんて話も聞いたりします。
送り出し機関は出国手続きと出国前教育をする機関ですが、その機関ごとで教育格差は大きく、全体の9割の機関が悪い教育環境と言っても過言ではありません。

技能実習生トラブルの原因

取材者

ベトナム人技能実習生のトラブルについて聞かせて下さい。

猪谷氏

トラブルの原因は大きく分けて3つあります。

②の企業や監理団体の対応は以前より良くなってきてるとは思います。

監理団体は以前でしたら、反社の関係かな?というような団体もありましたので。

③の本人に関しては、①とも関わってくるところだとは思うのですが、実際には地元で素行の悪い人の親や家族が厄介払いみたいな形で送った話も聞いたりします。

そもそも建設業などは不人気ですので、人を集めるのが大変という実情もあり、そのような素行の悪い人でも、候補者が他にいないため採用なんてことは起きてます。

冷房環境の整った食品加工なんかは人気で応募が殺到するのですが、建設業は外でのお仕事なので労働環境としては過酷ですからね。

エージェントや送り出し機関にお金を払って日本企業との面接で押し込んでもらい、行儀修行のために日本に行かせられて日本で問題起こしたら、ベトナムの家族が帰国拒否…なんて話も耳にしたりします。

日本は他国に比べて送り出すまでの手続きが多かったり、日本語も難しかったりするので技能実習先としてはあまり好まれていない傾向にあります。

それでしたらもう少し気軽に行ける国の方が…と考える人が多いです。

①の送り出し機関の問題については、先ほども申し上げた通り悪いところが9割です。

教育の質にかなりの差があると申し上げましたが、実際は教育の質が悪い送り出し機関の方が人気あったりします。

理由は簡単で、すぐに簡単に送ってくれるからです。

最初少しだけ日本語勉強したら、あとはオンライン可!だったりしますので、オンライン勉強期間中は田舎に帰って働いたり家族と暮らしたりすることができます。

悪い送り出し機関と言ったのは、そういう送り出し機関が本人たちから多くのお金をとっていますから、実質「お金を払えば勉強が免除される」に近い仕組みになってしまっているのです。

もちろん、直前になって補習したりもしますが、本来であれば送られるまでの半年間で習得すべきは日本語だけではないのです。

ベトナム人は家族第一の民族です。

日本に送られるまでの半年間は、寮など親元から離れた場所で生活し、社会の一員として家族以外の人間関係の在り方を学ぶ時間でもあります。

その時間を持たずにいきなり日本に来るというのは、外部の人との共同作業、共同生活の仕方が全然分かってないため、トラブルが起きかねない状況と言わざるを得ません。

トラブルを回避するためには

取材者

いざ技能実習生を受け入れたいとなった時に、トラブルを回避するためにはどんなことが必要ですか。

猪谷氏

きちんと実情を知った上で段階を踏んで進めていけば、トラブルに対するリスクを最小限にとどめる事はできます。

まずは、日本の企業は監理団体を先に選ばないという事です。

送り出し機関から探すようにしましょう。

と言いますのも、監理団体を先に決めてしまうと、送り出し機関は自ずとその監理団体と繋がりのある送り出し機関になりがちです。

その送り出し機関が、必ずしもいい送り出し機関とは限りません。

先ほども申し上げました通り、9割がよくない送り出し機関ですが、実際にそのよくない実情を監理団体が把握してるかどうかもわかりません。

ベトナムの送り出し機関を探すとなるとかなりハードルは上がりますが、後々のトラブル回避を考えたら、まずは現地で送り出し機関をいくつか視察し、選定した上で監理団体を決めるのがいいと思います。

そうすることで、きちんと送り出しまでの半年間に日本語などを身につけた状態で送り出してもらえるので、リスクを最小限にとどめる事はできます。

取材者

ありがとうございました。

次回以降、技能実習生の受け入れ成功事例などもご紹介いたします。
技能実習生の受け入れを検討中の方は一度猪谷氏に相談してみる事をオススメします。