
2024年に成立した改正入管法により、技能実習制度に代わって新たに導入される「育成就労制度」。
この制度の中核を担うのが「人材育成計画(=育成就労計画)」です。
これまでの“技能実習計画”と異なり、単なる形式的な書類ではなく、教育と成長を証明するための基準書として位置づけられています。
本記事では、「人材育成計画」とは何か、どのような内容が求められるのか、そして作成・運用を効率化する方法についてわかりやすく解説します。
人材育成計画が制度の中心にある理由
「労働力確保」ではなく「人材育成」を目的とする制度へ
育成就労制度は、従来の技能実習制度が抱えていた「低賃金労働」「実習目的の形骸化」といった課題を是正するために設計されました。
新制度では、外国人材が日本国内でスキルとキャリアを積み、自立できる人材として育つことを目的としています。
そのため、行政や監理団体が求める書類も、「労働実績報告」ではなく「育成成果の証拠」に重点が置かれます。
つまり、「人材育成計画」は、受入企業がどのように教育し、どんな力を身につけさせるのかを示す制度の中心的ドキュメントなのです。
教育と評価の一体運用が求められる
育成就労制度では、「教育(計画)」と「評価(記録)」がセットで求められます。
企業が計画を立てた通りに教育を行い、結果を定期的に評価・報告するサイクルが基本になります。
この仕組みによって、行政は「実際に成長支援が行われているか」を可視化できるようになります。
技能実習との違い(教育重視への転換)
従来:技能を“実践で覚える”制度
技能実習制度では、受入企業の現場で働きながら技能を身につける「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」が中心でした。
そのため、教育内容の具体性よりも、「受入れ職種」や「実習期間」「監査報告」の形式が重視されていました。
新制度:OJT+Off-JTの両立が義務化へ
育成就労制度では、OJTに加えてOff-JT(座学や講習などの体系的な教育)が求められます。
たとえば、以下のような教育内容が想定されています。
- 業務上の基本スキル(安全衛生・作業手順など)
- 日本語教育(業務理解・生活支援を目的とした基礎日本語)
- 文化理解・社会ルール・人権尊重教育
- キャリア形成支援(将来の特定技能移行を見据えた内容)
これらを「人材育成計画」に明示し、教育を実施・記録・評価することが、制度上の義務になります。
評価方法も数値化・記録化される
技能実習制度では「実施報告」が中心でしたが、育成就労制度では評価の明確化(定量・定性)が求められます。
たとえば、
- 技能レベルの到達度(初級〜中級など)
- 日本語能力(CEFR/JLPT準拠)
- 教育実施時間・参加率
などを定期的に記録・報告する形が想定されています。
作成に必要な書類・項目の想定
「人材育成計画(育成就労計画)」の基本構成
法務省・厚労省の公表資料(※参考:出入国在留管理庁「育成就労制度の骨格について」)によると、育成計画には次のような項目が盛り込まれる見込みです。
- 基本情報
外国人材の氏名・国籍・在留資格・雇用契約期間・配属先など - 教育方針
受入企業としての育成方針(目的・理念・ゴール設定) - 教育内容(OJT/Off-JT)
指導内容、教育時間、教育担当者、使用教材など - 評価基準・方法
評価時期、評価者、技能・語学・行動評価など - 支援体制
監理団体・教育機関との連携方法、面談記録・相談支援内容 - 成長の記録(評価記録)
各期間ごとの進捗・達成度・フィードバック記録
これらを定期的に更新・提出し、行政や監理支援機関が確認できる状態に保つことが求められます。
「書類」から「運用」への移行
従来は「提出すれば終わり」だった計画書ですが、育成就労制度では、継続的な運用と改善サイクル(PDCA)が重要になります。
例えば、半年ごとに教育計画を見直し、評価結果をもとに次のステップを設定する、といった運用が求められます。
システム化による計画管理の効率化
紙とExcelでは追いつかない時代へ
人材育成計画の作成・更新・評価を手作業で行うのは限界があります。
OJT・Off-JTの実施状況や評価データを個別に記録していては、書類が膨大になり、管理が煩雑化します。
そこで注目されているのが、育成計画のデジタル管理システムです。
システム導入のメリット
- 計画書・評価記録の自動生成
登録データから各書式に自動反映できるため、作業時間を大幅に削減できます。 - 教育進捗の可視化
各外国人材の教育進捗や達成率をグラフで把握でき、監理団体や企業が容易に確認できます。 - 期限アラート機能
評価日や報告期限を自動で通知し、提出漏れを防止します。 - クラウド共有による連携強化
監理団体・受入企業・教育機関が同じ情報をリアルタイムで共有できるため、コミュニケーションコストが減少します。
DX化がもたらす組織変革
育成計画を電子化・データベース化することで、「教育の質」を客観的に可視化できるようになります。
これは、監理団体にとって行政からの信頼を得る最大のポイントになります。
人材育成の成果をデータで示すことができれば、制度対応だけでなく、組織のブランド価値向上にもつながるでしょう。
(※本記事は2025年段階の公表資料に基づく解説であり、今後の法令・運用要領の改定によって内容が変更される可能性があります。)
まとめ
育成就労制度における「人材育成計画」は、単なる書類ではなく、教育・評価・成長支援の全体設計図です。
制度の本質を理解し、形だけでなく「運用」までを意識した管理体制を整えることが、これからの監理団体と受入企業に求められます。
紙の書類ではなく、データで教育を証明する時代へ。
人材育成計画のデジタル化こそが、育成就労制度の成功の鍵となるでしょう。
参考文献・出典
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の創設及び特定技能制度の見直しに係る関係法律の公布について」(2024年)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の骨格について(有識者会議 最終報告書)」(2024年)
- 厚生労働省「育成就労制度に関する検討会報告資料」(2024年)
- 法務省「外国人材の受入れ・共生に関する有識者会議 最終報告書」(2024年)
- Global Saponet「育成就労制度とは?技能実習との違い・開始時期を解説」
- Meiko Global「育成就労制度の課題と懸念点」
- NBC協同組合連合会「育成就労制度の骨子案が公表されました」
- 外国人技能実習機構 IMM「育成就労制度に関する法改正の成立について」
- 日経クロステック「外国人雇用と人材育成におけるデジタル化の潮流」

