
「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズで大変お世話になっている猪谷さんに、今回はニュースでも大きな話題になりました「FPTジャパンとヤマト運輸、特定技能制度を活用したベトナム人大型トラックドライバーの採用・育成に関する基本合意書を締結」というニュースについて、実際どうなのか?というところをざっくばらんにお話していただきました。

ヤマト運輸から、FPTグループが運営するベトナムの教育機関で特別クラスを開講し、日本のヤマト運輸の拠点間輸送を担う大型トラックドライバーの採用・育成を行っていくと発表がありました。
毎年100名の採用を目指すとのことですが、猪谷さんから見たこのニュース、どのように見ておりますでしょうか?

ネットでは批判的な声もあるようですが、内容を拝見させていただきますと、とても教育に力を入れる事が発表されておりますので、僕自身は批判的には思っておりません。
むしろ、ベトナム国内で半年間FPTグループ教育機関の特別クラスで日本語(N4レベル)や日本文化(基礎)、ヤマト運輸監修による安全学習(基礎)を受講し、さらには日本に来てからも一年間かけて日本語(N3レベル)と日本文化(応用)、ヤマト運輸監修による安全学習(応用)を受講し、外国の運転免許証から日本の運転免許証への切り替え試験を受験し、大型自動車第一種運転免許を取得という流れになっておりますから、実際に入社して働き始まるまでに1年半はしっかりとした教育を受けるということになります。
これだけしっかりとした教育体制を整えての受け入れとなりますから、ヤマト運輸の方でも事前に時間をかけて調査、財務シュミレーションしたことが予想されます。
いくら採用費をかけても、人材紹介会社が儲かってく一方で全然採用できないと言われるようなご時世なので、採用コストを教育コストに切り替えて人材を育てて人材の確保をするということは、今回のニュースを踏まえ今後も増えていくのではないかと思っております。
日本人の採用でもそうですが、もちろん事故ゼロというわけにはいかず、事故を起こした時には大々的にニュースに取り上げられてしまう可能性もあります。
そういったコンプラ部分も踏まえた上で、会社をあげて体制構築しているのだと思います。

確かに、今回のヤマト運輸のニュースを皮切りに、採用コストを教育コストに切り替えて財務シュミレーションする企業は増えるかも知れないですね。
ただ人材を確保すればいいというだけではなく、しっかり教育体制を整えたってところが今回の鍵になりそうですね。

今回、送り出し機関を選ばずにFPTを選んだというところが一番のポイントで、それはむしろ、いい送り出し機関がなかったとも捉えられます。
大企業だからこそ、これだけ教育体制構築に投資をできたかも知れないですが、中小零細だとそうはいかないので、そうなるとやはり、以前からインタビューでも申し上げていた通り、“いい送り出し機関”から採用する事が大切になってきます。
接待攻勢だったり、安かったり、紹介だったりとかで特に現地視察もしないで決めると、送り出し前の半年間にほとんど教育をされないまま日本に来てしまうような送り出し機関を選んでるケースもあります。
ヤマト運輸ほどの教育投資をできない企業でも、送り出し機関をきちんと選定することでいい人材を確保することはできます。

確かに以前から送り出し機関の選定がいかに大事かをお話しされてましたね。
今物流業界では、深刻な人手不足が騒がれておりましたので、今回のヤマト運輸の新しい採用スタイルにより、日本全体の物流業界が変わるかもしれないですね。

最近、大阪から東京に宅急便を送ったのですが、4日かかると言われました。
以前なら1〜2日で着いたと思います。
時期的な問題なのかもしれないですが、もしかすると人手不足による影響なのかも知れないですね。
今回のヤマト運輸の教育投資により、日本に住む人々の不便が解消されるといいですね。

本当にそうですね。今回も貴重なお話をありがとうございました。
株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄 氏 (Inotani Takahide)
大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。


