
「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズで大変お世話になっている猪谷さんに、今回もベトナムとインドの比較についてお話していただきました。
前回のインタビューの中で、インド人を技能実習生(特定技能)として採用するのは難しいという話をしておりましたが、どうして難しいのかについてさらに掘り下げてお話を聞きたいと思います。

インド人を技能実習生として採用するのは、どういう点で難しいのでしょうか?具体的に教えてください。

現地に在住する複数の日本人の方にお聞きしたのですが、理由は大きく分けて3つあります。
1つ目は、カーストの問題です。
カーストは4つの階級と、カースト外のいくつかによって成り立っており、今はその意識も薄れてきていると言われてますが、田舎の方では根強くカーストの意識が残ってるようです。特に、技能実習生として日本に来るとなると、デリーなどの都市部ではなく、田舎の方から来ることになりますので、まだまだカーストが根強く残っていると考えた方がいいでしょう。大企業で受け入れが100人とかになると、それなりに環境も用意していたりするので問題ないのかも知れませんが、中小企業で受け入れ人数も数名とかになると、面接時に人選を配慮しなければその中でカーストによる上下関係が発生しかねないです。また、上下関係発生しなくてもカーストが違うことで文化的生活背景が大きく異なるため、一緒の部屋で生活なんてとてもできないとインド人が言うくらいです。後述しますがそれ以外にも細かい配慮がたくさん必要になるので、中小企業の場合、総務部への負担が大きく、コントロールが難しくなってしまいます。
2つ目がインド人の教育の大変さです。
インドでインド人スタッフをマネジメントしてる日本人の皆さん口を揃えておっしゃるのがマネジメントの難しさです。時間を守ること、決められたことをやるという指導だけでも守ってもらうのは難しいのが現状のようです。さらに、仕事だけではなく、地域などでトラブルを起こさないようプライベートでもとなると、決まりを守ってもらうのは不可能に近いです。また、インド人は、納得するまで動かないので、日本人が想像する以上にマネジメントをすることがかなり難しいです。そうなると、教育費を含めたトータルコストを見た時に、インド人人材を技能実習生として迎え入れるのは決して得策とは言えません。
3つ目に言葉の問題もあります。
インドと言えば、ヒンドゥー語や英語が話せるというイメージですが、IT人材のように高度教育を受けている場合は別ですが、それは限られた人になります。
インドには20近くの言語があり、同じインド人と言えどもみんながみんなコミュニケーションを取れるわけではありません。ベトナムなら南北でもコミュニケーションが取れたりしますが、日本で言うところの青森と沖縄以上に違う言葉で話すと言っても過言ではありません。日本人から見ると、インドという1つの国の人達ですが、地域やカースト、言語が異なると全く違う国の人くらいの違いがあるようです。
以上のように、カーストの件や教育面、言語のことを考えると、数名だけ外国人人材を迎え入れるのであればベトナムやインドネシアの良い送り出し機関を通じて選んだ方がいいと言えます。
そもそも外国人人材を求めている企業の大半は大量採用が必要じゃないので、それであればベトナムやインドネシアなどで少人数をきちんと育ててくれる優良送り出し機関との付き合いを深めておけば良いのであり、人口が多いからってインドにこだわる必要はありません。
また細かい配慮ってところで申し上げますと、食事の問題も複雑な問題の1つで、社員食堂で食事用意する会社の場合、インド人はベジタリアンとノンベジタリアンがいたり、ベジタリアンの中でもたまごOKやミルクOKの人もいたり、ヴィーガンの人もいたり、ノンベジタリアンでも豚肉NG、牛肉NGはほぼNGですし、それぞれの人達の細かく分かれている食事に対応して用意していくことになります。これまで受け入れが多かった中国、ベトナム、インドネシアとは比較にならないほど対応作業が発生します。
それらを考えると、技能実習生でインド人を少人数で採用するのは難しいという結論に至ってしまいます。

なるほど。インド人と一括りにできないくらい多種多様な方がいらっしゃるんですね。大変勉強になりました。今回も貴重なお話ありがとうございました。
株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄 氏 (Inotani Takahide)
大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。


