「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズ第8弾。

今回は、「失敗しない面接」についてお話を伺いました。

取材者

ベトナムの技能実習生を採用したい時、面接時にはどのような事に気を付けたら良いのでしょうか?

猪谷氏

そもそもの大前提として、面接段階では実習生の候補者はほとんど日本語を話すことができません。「おはようございます」くらいしか話せない人がほとんどだと思ってもらっても構わないくらいです。と言うことは、通訳を介して面接を行うことになります。そして、その通訳者は、監理団体か送り出し機関が用意することになります。監理団体が通訳を用意するのでしたらまだいいのですが、送り出し機関が通訳を用意する場合は、採用してもらえるように都合のいいように通訳してる可能性もあります。極端な例ですが、面接官が「身体の状態は健康ですか?不健康ですか?」と質問し、面接者が「不健康です」とベトナム語で答えてるのに、通訳が「健康です!」と答える可能性もあるということです。お金のためにどうにかして採用されて欲しいという利害関係がある人が通訳の場合は、信用しない方がいいかも知れないです。

取材者

そうなんですね。まさか、通訳の方が受かるために都合のいいように通訳するなんて思ってもみませんでした。では、具体的にどのような面接をするのがいいのでしょうか?

猪谷氏

過去に見てきた例で言いますと、時間を計って豆を皿から皿へお箸を使って何個運べるかというテストをされていた会社さんもいます。このテストでは、何よりも集中力を見ることができます。もちろんそこで、器用さを見ることもできますが、仕事をする上でどんな職種であれ集中力というのは大切になってきますので、共通して使える面接内容ではないかと思います。そして、その豆のテストの善し悪しが、学力テストの点数と比例しているという結果も見てきました。学力テストに関しましても、きちんとSPIテストを用意して望まれてる企業さんは、採用による失敗が少ない傾向にあります。日本でも『小3の壁』なんて言葉がありますが、ベトナム人でも、酷い人ですと小3くらいの算数で躓いたまま大人になってしまってる人もいるんです。例えば、食品加工の工場で働くとして、「35gのものを8個作って下さい」と言われた時に混乱してしまったり、建設業なんかで「この木材を3mm削って下さい」と言われて困ってしまうようでしたら仕事をしていくのが難しくなってしまいます。そういうこともあって、基礎学力と素養をみるようなテストは必ず実施する必要があります。

取材者

日本だと最低限の学力はあるだろうという前提で面接をしていたりする部分もあるかも知れないですね。以前、送り出し機関が体力づくりをしていたりすると話されてましたが、面接では体力は見られないんですか?(参考:ベトナムの送り出し機関って実際どうなの?②

猪谷氏

実際に面接で体力テストをしているケースもありました。ベトナムは体育の時間が少ないと言うこともあってか、体力がない人も多いんですね。そういう事情をわかってる方ですと、面接時にいきなり時間内に腕立て何回できるかチェックされていたりしました。人事部がない小さな会社の場合、鶴の一声じゃないですが社長が直感により人を採用したりしていたりもしますが、そういう人に限って元気に腕立てしてる人を勢いで採用したりします。それでうまくいけばいいのですが、実際はそれだけを判断材料にするのはかなりのリスクなので、先ほども述べたように最低限の学力と素養を知るためのテストも並行して行うことをオススメします。

取材者

面接時にこんな質問はNGっていうのはありますか?

猪谷氏

いくつかあるのですが、例えば想定されるような質問をすることです。候補者たちは良くも悪くも受かるために事前に送り出し機関と面接対策をされてるんですね。事前に想定される質問に対しての回答を送り出し機関が用意した形で覚えさせていたりします。例えば、「技能実習を終えたら何がしたいですか?」と質問したとして、面接者が「故郷に帰って技能実習で得たスキルを使って働いて家族を助けたいです」と言ったとします。これがまさに、送り出し機関が用意した答えである可能性があるということです。極端な話、履歴書すらも、信用できなかったりします。あまり深くは言えないですが、本当の経歴が書かれてない可能性が十分にあるからです。そして、ベトナム人に「将来の夢は?」と聞いたりするのも愚問かなと思います。ベトナム人は、将来思考というよりは、現実思考なので、今目の前をどうするかということを考えてる民族です。もし仮に、将来の夢に対する返答が素晴らしいものだったとしたら、それは送り出し機関が用意した答えである可能性が高いです。日本では、ワーカー(単純労働ワーカー)も頑張ればマネジメントクラスの人間になれるという認識がありますが、例えば、パートさんの面接に「将来の夢は?」とは聞かないですよね。しかし、面接を受ける人が若かったりすると、将来の夢などを質問しがちで、質問としてはどうなんだろうという感じです。

取材者

面接対策がしっかりされているというのは、実際とは異なるということになりますので怖いですね。最後に、猪谷さんの繋がりのある送り出し機関で、ここはオススメできるというところはありますか?

猪谷氏

いくつかありますが、例えばベトナムリンク日本語学校ですね。ここは少数精鋭の送り出し機関で、リクルーティングがしっかりされています。手数料が低く、法定以上は絶対にとらないところなので、実習生も7~8ヶ月で借金返済を終わることができます。酷い送り出し機関ですと、面接に来た6人中5人がサクラでドタキャンするなんてこともありますからね、送り出し機関選びはとても大切です。

取材者

猪谷さん、ありがとうございました。