外国人技能実習制度の見直し議論が、有識者会議で進められております。

これまで厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害にある可能性を示唆しました。

そして、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書をまとめました。

新たな制度は人材の確保と育成を目的とし、名称も「育成就労制度」に変えるとしています。

それに合わせて、技能実習制度の目的も、従来の「人材育成による国際貢献」、「途上国への技術移転」から、「人材確保と人材育成」へと修正し、それに合わせて制度の名称も「育成就労」とする案が検討されております。

技能実習生の人権擁護について

技能実習制度は、実習期間を通じて同一企業で実習することを前提となっております。

そのため原則として転籍ができません。

その結果、技能実習生がパワハラやセクハラ、いじめ等の人権侵害に遭っても声を上げづらく、実習先から失踪してしまう事例が少なくないのが現状です。

21年度の失踪者は7000人に上り、22年度は9000人を超す見込みとなっております。

新たな制度では、人権侵害の被害から救済される仕組みを構築することが不可欠となります。

入国前の課題について

技能実習生が高い給与の職場を求めて失踪するケースもあります。

その背景には、来日する準備のために実習生が借金を背負っているという事実があります。

その数約55%に上るとされています。

背後には高額の仲介料で実習生に過剰な債務を負担させる悪質なブローカーの存在もあるようです。

新制度では、入国前に実習生が負担するコストを適正化する取り組みも必要となります。

今後の課題について

2022年度末時点で約32万人の技能実習生が日本に在留しております。

そのうち約55%がベトナム人であり、ベトナムは有力な送り出し国です。

しかしながら、最近のベトナムから日本への送り出し人数は減少しております。

有識者会議での議論を踏まえて、新制度では技能実習生が日本に来てよかったと思える制度を設計することが重要となります。

さいごに

1993年に実習生制度が創設された時と今では、経済環境は大きく変わっております。

日本は、経済の成長力低下を背景に、約30年もの間賃金水準がほぼ横ばいに留まりました。

さらに、過去10年で円安が進行したことで、外国人労働者にとって日本の賃金水準の魅力は大きく低下しました。

アジアからの外国人実習生は、韓国など日本以外の国に流れる傾向が強まっております。

そうした中で、実習生を受け入れる制度は今後、実習生によって選ばれる日本、選ばれる企業となることを優先に考え、人権、処遇の面で実習生に十分に配慮したものに見直していく必要があると言えます。