「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズ第12弾。
今回も、闇が深いベトナム人の借金に関するお話について伺いました。

取材者

前回から続いてベトナム人技能実習生の借金事情のお話になりますが、最近になって少し事情が変わってきた部分もあるとのことでお話を聞かせて下さい。

猪谷氏

ベトナム人技能実習生と言えば、多額の借金を背負って日本に来てるというイメージをお持ちの方も多いかと思います。
以前のインタビューでもそういうお話をさせていただきましたが、実はそういう人達だけではありません。
以前、行儀修行のために家族が行かせてるなんて話もさせていただいたこともありましたが、実習生の家族や親戚が実習前にかかる費用を負担しているため、実習生本人は借金をしていないというケースもあります。
技能実習に来て初月の給料でiPhoneを購入していたりするので、雇い主側もビックリしたりします。
更には、何年か前ですと「実習中に一度は東京に行ってみたい」と実習生が話していたりしたのですが、今ですと「三連休を利用して旅行してきました!」「実習中は北海道・東京・大阪に旅行に行ってきました!」なんて話す人もいるくらい、経済的に豊かな実習生もいるというのが現状です。
ニュースでは、ベトナム人のニュースなどが大きくクローズアップされ、人権派の方が「借金を背負わされて働かされてかわいそうだ!」と仰ってるのを耳にしたりしますが、そういう実習生ばかりではないということをあえて申し上げさせていただきます。
もちろん、そういう実習生もおりますが、借金返済で大変というのは一部ということであります。

取材者

そうなんですね。確かにベトナム人技能実習生は、多額の借金を背負って日本に来て、辛い環境で働かせれて逃げる、または犯罪をする…みたいなニュースを目にする機会が多い気がいたします。
ベトナムも経済成長しておりますので、個人レベルでのお金に対する変化はありそうですね。
先ほど実習生が日本国内を旅行してる話をしてくれましたが、他にも日本でお金を消費したりすることはありますか?

猪谷氏

少し驚いた話で言うと、実習生がクラブ通いをしているんです。
しかも、ベトナム人専用クラブがあるようです、女の子は無料で楽しめるので、無料で楽しめることを目的に女性も来るんですね。
そして、男性はクラブで働く女性だけじゃなくそこに来てる女性をナンパしたりもして仲良くなったりするようです。
そういう部分でもベトナム人コミュニティが確立して、今度はベトナム人同士での経済活動も活発になります。
例えば、先日聞いたお話ですと、ベトナム人向けのエアコン修理業者がいるようです。
彼らは、わざわざ日本人のお客さんを探さなくても、ベトナム人相手だけで商売が成り立つようです。
他にも、ベトナム人相手に散髪をして稼いでる人もいるようです。
あちこちでコミュニティがしっかり確立しているので、その中で商売が回ってしまうんですね。

取材者

それは驚きですね。確かに毎年たくさんのベトナム人実習生が来てるのでしたら、日本国内のベトナム人をターゲットに普通にお仕事もできそうですよね。
以前、ベトナム人男性は博打が大好きとおっしゃってましたが、健全なお仕事でも経済活動が行われてるんですね。
そういえば、前から気になっていたのですが、博打ってどのようなことをされるんでしょうか?スロットやルーレットのようなものですと、パッと集まってできそうにもないですし…。
すぐにできるような博打と言えば、カードを使ったものとかでしょうか?

猪谷氏

ベトナム人の中でメジャーな博打は「ソックディア」になりますね。トランプを使ったゲームになります。
日本人が昔、花札とかを楽しんでいた感覚で、ベトナム人はソックディアを始めます。
例えば、お昼休憩の時に、ご飯を食べ終わった「5分だけ」とソックディアを始め、負けた人にジュースを奢らせたりします。そのくらい身近なものなんです。

取材者

トランプを使うのでしたら手軽に始められますね。
ほんの少しの時間でも始めるのは、現代の日本人だとスマホのゲームみたいな感覚なんですかね。
今回の取材で、ベトナム人の経済事情の変化など、今までとは違ったイメージを持つようになりました。
猪谷さん、今回も貴重なお話をありがとうございました。

株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄  (Inotani Takahide)

大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。