
「ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に聞く技能実習生事情」シリーズで大変お世話になっている猪谷さんに、今回はベトナムとインドの比較についてお話していただきました。
2024年と2025年の2回、インドを訪問して現地でたくさんの方からお話を伺った内容となっております。
猪谷さん自身も、「ベトナムと比べてインドってどうですか?」と質問されることが多く、日本企業でも外国人人材としてインド人を検討されてるところも多いようです。
そんな企業様向けの内容となっておりますので、是非ご一読下さい!

ざっくりとした質問ですがベトナムと比べてインドってどうなんでしょうか?

総合的なところで言うと、デリーで15~20年前のホーチミンという感じですね。
細かなカテゴリで色々違う部分はありますが、おおよそそんな感じですので、日本人がデリーに行って過ごせなくはないという感じです。
ただ、家などでもベトナム以上に設備の甘さや環境の厳しさなどがあるようで、ドアノブが取れた~!みたいなのは日常で、日本人居住区でも1日1回停電はあたりまえ、酷い時だと半日とか停電してることもあるようです。
デリーのインフラについては本当に最低限が整ってるという状況みたいで、デリーやグルガオンから少し離れると最低限にも満たないというのが実情で、日本人が暮らすには過酷とも言えるかもしれないですね。インドに進出してる日本企業の大半が大手で、外務省のデータによりますと8,000人~9,000人ほどがいるようです。
食生活に関しては、インド料理を毎日食べるのはツライという方も多いようで、大手企業ですと工場の食堂にも日本人用のお弁当が用意されていたりするようです。
フードデリバリーが日本よりも遥かに発展してるので、日常からフードデリバリーを利用する人も多く、牛肉、豚肉はなかなか食べられる場所がない中で、現地にいる日本人はフードデリバリーで日本食屋さんに豚の生姜焼きや豚キムチなど豚肉の料理をオーダーしたりすることも多いみたいです。

確かに宗教的に豚肉は食べられない地域ですもんね。インドに訪れた際に現地の日本企業とお話されたのでしょうか?

10人以上の日本人とお会いしたのですが、そのうちの1人のコンサルタントの人が話してくださった興味深い話として、インドの地方の日本企業はかなり日本人駐在員とのアポが取りやすいというのがあります。
と言いますのも、特にインドの地方に駐在すると、周りにはほとんど日本人もいない上に、日本本社からもインドにはほとんど誰も出張してくれないため、日本語に飢えてるみたいで、営業訪問であっても喜んで受け入れてくれたりするようです(笑)。
ベトナムと違い、日本本社の人間がインド訪問したがらないのはどこの会社も共通のようで、インドでの拠点立ち上げのサポートのための短期の出張ですら、滞在中のその生活の過酷さに1回目の出張を終えて日本に帰国するとなかなか2回目には来たがらないそうです。

まさに陸の孤島ですね(笑)そんな過酷な土地なのに、駐在の人などは行ってくれるんでしょうか?

ハードシップ手当がつくのと物価差もあるので、とてもお金が貯まりやすいという利点があります。
数年間インドに駐在していると、住宅ローンがかなり返せるなんて話も聞きますね。
道路はデリーでもガタガタなので通勤も辛いですが、インド料理に嫌気がささないようにお昼は毎日お弁当を持参したりと、様々な工夫をして数年間乗り切ったりしてるようです。

ハードシップ手当は大事ですね。ところでインド人の技能実習生(特定技能)という選択肢もありなのでしょうか?

複数の現地在住日本人の皆さんにこの質問をしたのですが、結論から申しますと、「難しい」と断言されました。
なぜかと申しますと、インド人のマネジメントは本当に難しいからだそうです。まず、インドにはカーストがありますのでマネジメントに細かなケアが必要になるからです。
更には、同じインドでも例えば北と南ではコミュニケーションすら取れません。というのも大きく分けても20くらい言語があり、英語を除くと他の言語はわからないケースも多いです。
採用するメンバーが全員同じ地域出身で同じカーストの人ならまだ同じプロジェクトで働くことはできるかも知れないですが。
あと、会社の食堂とかだとベジタリアン、ノンベジタリアン等々かなり細かく分かれるため、インド料理以外では対応難しいと。
また、それ以外でも細かい要求がかなり多いので、中小企業だと総務の日本人が対応に追われて潰れてしまうリスクの方が高そうです。
進出日系企業も、労働者をまとめるマネージャーはインド人にしてるケースがほとんどで、そのインド人マネージャーが、労働者からの細かい要求を止める役割も果たしているようです。
ただ、マネージャークラスでもインド人は遅刻があたりまえ、遅刻の理由を尋ねると自分の正当性を主張するために長々と言い訳を始めてこちらの仕事の妨げになるレベルだそうです(笑)。
そんな感じですので、インドにいる日本人からしてみると、「これからはインド人材!」とか言われると「本気ですか?」と思うようです。
みんながみんな、口をそろえて「やめとけ」と言いますね。

そうなんですね(汗)日本ではインド人は優秀だから~なんて話も聞きますが、優秀さだけで考えてはダメですね。今回も貴重なお話ありがとうございました!
株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄 氏 (Inotani Takahide)
大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。


