
近年、AIの急速な進化によって、ベトナム国内の雇用環境が大きく変わり始めています。
これまで「安定した職業」とされていたホワイトカラー職が急速に縮小し、一方で現場系・技能系の仕事とのバランスが大きく崩れ始めています。
今回、ベトナム在住VIT Japan猪谷氏へのインタビューを通じて、ベトナムで起きている“AI時代の雇用変化”について伺いました。
「AIでできる仕事」が急増している
現在、ベトナムではAIによって代替される業務が急増しています。
特に影響を受けているのは、下流工程や単純作業が中心のホワイトカラー職です。
例えば、
- コーディング
- バグチェック
- 集計作業
- SNS運用
- バックオフィス業務
などは、以前まで多くの人材を必要としていましたが、現在ではAIによってかなりの部分が代替可能になっているといいます。そのため外注フリーランスの仕事も減ってるようです。
以前は、IT系の新卒であれば比較的容易に就職できた時代もありました。
しかし現在は、AIの普及により「新人レベルの仕事」が急速に減少しているとのことでした。
“ジュニア人材”の仕事が消え始めている
特に深刻なのは、若手人材のポジション減少です。
これまでは、
- ジュニアエンジニア
- 初級コーダー
- チェッカー
- コミュニケーター
といったポジションが多く存在していました。
しかし現在では、AIが一定レベルのアウトプットを出せるようになったことで、企業側が「教育コストをかけて新人を採用する理由」が薄れ始めています。
一方で、3年以上の経験を持つマネジメント人材については、まだ需要が残っているとのことでした。
つまり、
- 指示を受けるだけの人材
- 単純作業を行う人材
よりも、
- AIを使いこなす人材
- AIへ指示を出す人材
- チームを管理する人材
の価値が高まっているのです。
40代ホワイトカラーにも影響
AI化の影響は若年層だけではありません。
インタビューでは、「40代のホワイトカラー層がリストラ対象になっている」という現実も語られました。
特に、
- マネジメント経験が弱い
- 集計や事務中心だった
- AI導入で業務削減できる
といった職種では、厳しい状況になっているそうです。
実際に、100名規模の企業が人員を3分の1まで削減した事例もあるとのことでした。
その際、主に整理対象となったのは、
- 大学卒の若手
- 40代の事務系人材
だったといいます。
一方で、現場系は人手不足
興味深いのは、ホワイトカラーの仕事が減少している一方で、建設業などの現場系では依然として人手不足が続いている点です。
つまり現在のベトナムでは、
- ホワイトカラー余剰
- 現場系不足
という“雇用のアンバランス”が起きているのです。
AIによってデスクワークは削減される一方、現場で実際に身体を動かす仕事は依然として人が必要とされています。
技能実習帰国者の状況も変化
さらに、技能実習生として日本へ行った人材の帰国後の状況も変わってきています。
以前であれば、日本語を活かした職業に就けるケースもありました。
しかし現在は、ベトナム国内でもホワイトカラー職自体が減少しているため、
「日本から帰国しても、日本語を活かせる仕事に就くのが難しい」
という状況になっているそうです。
大卒でも“行き先がない”時代へ
ベトナムでは大学進学率が上昇しています。
しかし、その一方で大卒向けの仕事が十分に増えているわけではありません。
そのため、
- 若年層の大量リストラ
- 大卒人材の余剰
- ホワイトカラー職不足
が同時に発生しています。
また、インドでも同様に「大学卒業後の就職先不足」が問題となっており、日本への就職倍率が30倍になっているケースもあるとのことでした。
まとめ
今回のインタビューを通じて見えてきたのは、AIによってベトナム国内のホワイトカラー雇用が急速に縮小している現実でした。
特に、日本で技能実習を終えて帰国した人材が、日本語を活かした仕事に就くことは、以前と比べて極めて難しくなっていると言えます。
これまでは、「日本語ができる」ということ自体に大きな価値がありました。
しかし現在は、AIによる業務効率化やホワイトカラー職の削減によって、その受け皿自体が減少しています。
今後は、単に日本で技能を学ばせるだけではなく、
- 帰国後にどのような仕事へ繋げるのか
- どのようなキャリアパスを描けるのか
- AI時代でも活躍できるスキルをどう身につけるのか
まで含めて、実習実施者側も考えていく必要があるのかもしれません。
株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄 氏 (Inotani Takahide)
大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。



