今回は、ベトナム在住VIT Japan猪谷氏に、イラン戦争による国内のエネルギー事情について話を伺いました。

中東で起きた戦争は遠い国の出来事に見えますが、石油やガスの供給網は世界中につながっているため、ベトナム国内の生活や経済にも大きな影響が出ています。特にベトナムは大半を輸入に頼っているため、価格上昇や供給不安が起こりやすい状況です。

ベトナムのエネルギー構造

ベトナムは産油国なのですが、すべての燃料を国内でまかなえているわけではありません。

  • 石油の自給率:約20%
  • ガソリン:70%国内生産、30%輸入
  • 航空燃料:60%国内生産、40%輸入
  • 備蓄量:約20日分

また、経済成長とともにエネルギー使用量は年々増えており、国内生産だけでは需要に追いついていないとのことでした。さらに、油田の枯渇や生成力が追い付かない事により、輸入に頼らざるを得ないのが現状です。

イラン戦争による燃料価格の上昇

今回もっとも大きな影響として挙げられたのが、燃料価格の上昇です。

ベトナム国内では

  • ガソリン価格が約40%上昇
  • 一時的に20,000ドンから30,000ドンまで上昇
  • その後、政府調整で25,000ドン前後まで下落

(それぞれリッターあたり)

という動きがあったそうです。

また、軽油についても一時90%近い値上がりとなり、現在でも50〜60%高い水準が続いているとのことでした。

供給面での不安

価格だけでなく、供給そのものへの不安もあります。

備蓄量が約20日分と多くないため、長期化した場合には不安が残ります。さらに航空燃料については、価格高騰に加えて確保自体が難しくなっており、減便の措置もあるとのことでした。

LPG(プロパン・ブタン)も重要なエネルギー源ですが、ベトナム政府がオーストラリア、アメリカから調達ができたことにより、値上げはあるものの供給はできている状況です。

周辺国への影響

今回の混乱はベトナムだけでなく周辺国にも波及しています。

インタビューでは、カンボジアでは燃料を十分に確保できず、地域によっては供給不足が起きているとの話もありました。東南アジア全体がエネルギー価格高騰の影響を受けていることが分かります。

プラスチック製品の値上がり

石油由来の原料を使うプラスチック製品なども価格が上昇しています。

企業が見積もりを出せず、実際に取り引きする時の“時価”で、と通達されることも。

農業への影響

農業分野にも影響があります。

  • 燃料代の上昇
  • 肥料コストの上昇
  • 輸送費の上昇

特に肥料価格は農家にとって大きな負担であり、作付面積や収益にも影響が出る可能性があります。

ベトナム国内の課題

今回のインタビューでは、将来的な不安も指摘されました。

  • 燃料価格の回復には時間がかかる
  • 東南アジアの政情不安な国では大規模デモや政権転覆の可能性も
  • 建築資材がないことにより家が作れない

急な国際情勢の変化に対し、素早く対応しにくい面があるようです。

まとめ

イラン戦争の影響は、ベトナム国内にも確実に広がっています。

  • 燃料価格の上昇
  • 航空燃料やLPGの供給不安
  • 物流費・製造コスト増

航空チケットの値上げにより、技能実習生を雇用している企業は負担増となっています。

そして、エネルギー価格の上昇により世界的に使用料を減らす動きが出てくると、経済成長の妨げになります。

中東での出来事とは言え、ベトナムや日本にも大きな影響が出ております。

株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄  (Inotani Takahide)

大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。