ベトナムでは旧正月(テト)を境に、労働市場が大きく動くと言われています。
実際に、テト明けは「転職のピーク」とも呼ばれ、企業・労働者双方にとって重要なタイミングです。

今回は、ベトナム在住VIT Japan猪谷氏へのインタビューをもとに、テト明けのベトナム労働市場のリアルな動向を整理しました。

テト明けは“転職のゴールデンタイム”

ベトナムでは、テト前にボーナスが支給される企業が多く、それを受け取った後に転職するのが一般的です。

そのため、

  • テト明け=人材の大移動が起きる時期
  • 企業側は採用競争が一気に激化

という特徴があります。

特に近年は、単なる転職ではなく、「より条件の良い企業へ移る流れ」が強まっています。

日系から中華系企業へ大量転職が発生

現在、最も大きな動きとして挙げられるのが、

👉 日系企業 → 中華系企業への転職増加

です。

背景

  • 北部(ハノイ周辺)を中心に中国系企業が急拡大
  • 給与水準が高い(お金がいい)
  • 大規模採用を実施

実際に、

  • 電機・自動車系企業で約3000人規模の募集
  • 地域単位で1000〜2000人規模で人材移動

といったケースもあり、大規模な人材流出が起きています。

ワーカーだけでなく“熟練者”も流出

今回の特徴は、単なる現場作業員だけでなく、

  • 技術者
  • 熟練スタッフ

も含めた転職が増えている点です。

つまり、企業の中核人材まで引き抜かれているという状況です。

ハノイ周辺では“引き抜き合戦”が激化

インタビューでは、「入社ボーナス付き転職が当たり前」という声もありました。

現在は

  • 入社ボーナス
  • 転職ボーナス
  • 高給与提示

など、企業同士の競争が非常に激しく、完全な“人材争奪戦”状態となっています。

日本企業も人材確保が困難に

この流れにより、日本企業では

  • 人材不足が慢性化
  • 採用してもすぐ辞める
  • 育てた人材が流出

といった問題が顕在化しています。

特に、「教育コストをかけた人材が他社に流れる」という点が大きな課題です。

中国企業の影響で構造が変化

なぜここまで変化が起きているのか。

大きな要因は、中国企業のベトナム進出加速です。

  • ヤディア(電動バイクメーカー)などが進出
  • 中国→ベトナムへの生産移転
  • 大規模工場の新設

これにより、ベトナム国内の雇用需要が急増しています。

教育・言語環境にも変化

興味深い変化として、

  • ベトナムの大学で中国語教育が増加
  • 中国語ができると給与アップ

という傾向も見られます。

実際に、

  • 一般の大卒:月給800万ドン → 大学で中国語学科卒:月給1200万ドン

といった差が出るケースもあります。

技能実習制度の影響と変化

日本への技能実習についても変化が見られます。

  • 技能実習生はワーカーとしての価値が高い
  • 日本企業が育成した人材が流出しやすい

FA(工場自動化)・ロボット化も進行

人材不足の影響で、

  • 工場のオートメーション化(FA)
  • ロボット導入

も加速しています。

これは、人に頼らない生産体制への移行を意味しており、今後さらに進むと見られます。

まとめ|ベトナムは“人材戦争時代”へ

テト明けの動向を整理すると、

  • 転職が活発化(毎年恒例)
  • 中国企業の進出で競争激化
  • 日系企業からの人材流出
  • 技術者・熟練者まで移動
  • 人材確保が極めて困難に

という構図になっています。

つまり、ベトナムは完全な「人材戦争」の時代に突入しています。

株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄  (Inotani Takahide)

大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。