特定技能で違反が増えている理由(2026年最新)

制度拡大による現場理解不足

特定技能制度は対象分野の拡大により急速に受入が進んでいます。出入国在留管理庁の公表データによると、特定技能外国人数は2022年:約13万人 → 2024年:約25万人超と急増しています。
一方で、制度理解が追いつかず、現場では要件を正確に把握しないまま受入を行うケースが増えています。

監査強化と摘発件数の増加

外国人技能実習生を雇用する事業場の約72.6%で労働基準関係法令違反が確認されています(令和4年監督指導結果)。

特定技能については制度が新しいため単独統計は限定的ですが、
実務上は技能実習と同様の違反構造が移行していると指摘されています。

よくある違反事例10選

① 在留資格と異なる業務に従事させている

許可された業務範囲を超えて働かせるケースです。例えば、外食業で許可されている範囲を超えた業務をさせると違反になります。

② 日本人と同等以上の報酬を満たしていない

同じ業務内容にもかかわらず、日本人より低い賃金で雇用している場合は違反です。手当の扱いも含めて総合的に判断されます。

③ 労働時間・残業の違反

長時間労働や未払い残業は典型的な違反です。外国人であっても労働基準法は同様に適用されます。

④ 支援計画を実施していない(形式だけ)

支援計画を作成していても、実際に実施されていない場合は違反と判断されます。特に生活支援の未実施は指摘されやすいポイントです。

⑤ 定期面談・報告の未実施

定期的な面談や入管への報告を怠るケースです。記録が残っていない場合も未実施と見なされます。

⑥ 登録支援機関への丸投げ・実態不在

委託していても、企業側の関与が全くない場合は問題となります。最終責任は受入企業にあります。

⑦ 不適切な住居・生活環境の提供

過密な住居や安全性に問題がある環境を提供している場合、労務管理上の問題として指摘されます。

⑧ 退職・転職時の不当対応

転職を妨害したり、必要な手続きを行わないケースです。特定技能は転職が認められているため、制限は違法となる可能性があります。

⑨ 雇用契約と実態の不一致

契約書と実際の労働条件が異なる場合は重大な違反です。特に勤務時間や業務内容のズレは厳しく見られます。

⑩ 不正な手数料・費用負担

本来企業が負担すべき費用を外国人本人に負担させるケースです。これは重大な違反として扱われます。

違反した場合のリスク

受入停止・許可取消

重大な違反がある場合、特定技能外国人の受入が停止されることがあります。最悪の場合、受入資格自体が取り消されます。

罰則・行政指導

違反内容によっては罰則の対象となるほか、改善命令や指導が入ります。継続的な違反は厳しく対応されます。

企業イメージへの影響

違反が公になると、取引先や求職者からの信頼が低下し、採用活動にも悪影響を及ぼします。

監査で見られるポイント(実務視点)

書類と実態の一致

最も重要なのは、提出書類と実際の運用が一致しているかです。形式だけ整えても意味はありません。

支援体制の実効性

支援計画が実際に機能しているかが確認されます。形だけの運用はすぐに見抜かれます。

外国人本人へのヒアリング

監査では本人への聞き取りも行われます。ここでの回答と書類内容が一致しない場合、問題視されます。

違反を防ぐための是正ポイント

業務内容・契約内容の見直し

まずは「契約書」と「実際の業務」が一致しているかを具体的に確認します。

チェックすべきポイント:

  • 業務内容が在留資格の範囲内か(例:外食→調理・接客のみ)
  • 契約書にない業務をやらせていないか
  • 配属変更・応援業務が発生していないか
  • 労働時間・残業・休日が契約通りか

対応策:

  • 業務一覧を明文化(作業レベルまで分解)
  • 配属変更時は必ず在留資格との適合性を確認
  • 契約書のテンプレを最新制度に合わせて更新

支援体制の内製化・管理強化

登録支援機関に委託している場合でも、企業側の管理責任は残ります。
「丸投げ状態」が最も指摘されやすいポイントです。

チェックすべきポイント:

  • 支援計画の実施状況を把握しているか
  • 面談内容・相談内容を企業側でも確認しているか
  • 支援機関任せで実態を把握していない状態になっていないか

対応策:

  • 月1回は企業側でも面談内容を確認
  • 支援記録(面談・生活支援)を共有させる
  • 担当者を社内に1人固定して責任の所在を明確化

定期チェックと社内教育

違反は「知らなかった」では防げません。
仕組みとしてチェックを組み込む必要があります。

チェックすべきポイント:

  • 在留資格ごとの業務範囲を現場が理解しているか
  • 外国人だけ特別な扱い(違法)になっていないか
  • 現場責任者が制度を理解しているか

対応策:

  • 四半期ごとの内部チェック(以下を確認)
    • 業務内容
    • 労働時間
    • 賃金
    • 支援実施状況
  • 現場向けに簡易マニュアルを配布
    • 「やってはいけない例」を明記
  • 新任管理者には必ず制度研修を実施

まとめ|「知らなかった」では通用しない

特定技能制度における違反は、制度理解不足から発生するケースが多い一方で、発覚した場合のリスクは非常に大きいのが特徴です。

2026年以降は監査もさらに厳格化されると考えられ、「知らなかった」では済まされません。日常的な運用を見直し、適正な受入体制を維持することが、外国人雇用を継続するための前提となります。

※本記事は、2026年4月の公開資料をもとに作成しています。

■ 参考・出典

・出入国在留管理庁
「特定技能運用要領」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00201.html

【該当内容】
・業務内容の適合性
・支援計画の実施義務
・定期面談・報告義務
・受入機関の責任

・e-Gov法令検索
「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」
https://laws.e-gov.go.jp/law/431M60000010005

【該当条文】
・特定技能雇用契約の基準
・受入機関の基準
・一号特定技能外国人支援計画の基準

・出入国在留管理庁
「特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00132.html

・厚生労働省
「外国人の雇用」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page11.html

【該当内容】
・外国人雇用管理指針
・日本人と同等以上の報酬
・労働条件の明示
・労働時間・安全配慮義務