
ベトナムでは近年、20~30代を中心としたZ世代の価値観が大きく変化しています。
かつては「家族のために働く」という考え方が一般的でしたが、現在は「自分らしい人生を送りたい」という意識が強まり、働き方やお金の使い方にも変化が見られるようになりました。
今回は、ベトナム在住で長年現地の人材事情を見てきたVIT Japan代表・猪谷氏に、ベトナムZ世代のリアルな労働観についてお話を伺いました。
「家族のため」から「自分のため」へ
以前のベトナムでは、給与や資格手当をできるだけ家族へ仕送りすることが当たり前でした。
しかし現在の若い世代は、お金を自分自身のために使う傾向が強くなっています。
例えば、
- ファッション
- 国内・海外旅行
- 趣味
- 最新のスマートフォン
など、自分の生活を豊かにすることへの消費が増えています。
実際、日本へ入国して最初の給与でiPhoneの最新モデルを購入する人も少なくないそうです。
もちろん家族を大切にする文化は今も根付いていますが、「まずは自分の人生を楽しみたい」という価値観が広がってきています。
出世よりも「自分らしい働き方」
以前は、いい会社に入って出世することが成功という風潮がありました。
しかしZ世代では、
「自分のやりたい仕事ができるか」
「自由な働き方ができるか」
という点を重視する人が増えています。
会社員として組織に所属して働くよりも、フリーランスとして自由に仕事をしたいという若者も多くなりました。
組織のルールや上下関係を受け入れることが苦手な人も増えており、「組織に合わせる」より「自分に合う環境」を選ぶ傾向があります。
残業よりもプライベート
働き方にも変化があります。
以前は残業をして収入を増やしたいという人も多くいましたが、現在の若い世代は「残業をしたくない」という考え方が目立ちます。
仕事よりも、
- 自分の時間
- 趣味
- 友人との交流
を優先する人が増えています。
週末は友人と食事やお酒を楽しみ、ダンスをするなど、仕事以外の時間を大切にするライフスタイルも多く見られます。
面接では「家族のため」と答える理由
興味深いのは、面接では今でも「家族のために頑張ります」と答える人が多いことです。
しかし実際には、その通りの生活を送っているとは限りません。
これは、日本企業が求める人物像を理解したうえで受け答えをしているケースもあるためです。
そのため、面接だけで価値観を判断するのではなく、本人が何を大切にしているのかを丁寧に確認することが重要だと猪谷氏は話します。
日本に近づく消費スタイル
ベトナムは経済成長とともに、消費行動も日本に近づいてきています。
昔のベトナムのホームページは派手な配色が多く、デザインより情報量を重視する傾向がありました。
しかし現在では、デザイン性やブランドイメージを重視する企業が増え、クリエイティブのレベルも大きく向上しています。
また、ショッピングモールなどでは「モノを買う場所」から、「体験を楽しむ場所」へと変化してきています。
SNSはTikTokが中心
若い世代の情報収集ではTikTokの影響力が非常に大きくなっています。
企業が採用活動や商品PRを行う際も、TikTokを活用するケースが増えており、日本と同様にSNSが消費行動へ大きな影響を与えています。
学歴だけでは就職が難しい時代へ
近年、大学進学率は大きく上昇しました。
その結果、大卒者は増えましたが、ホワイトカラーの仕事はそれほど増えておらず、大学卒業だけでは希望する仕事に就けないケースも目立つようになりました。
今後は大学だけではなく、専門学校や実践的なスキル教育の重要性がさらに高まる可能性があります。
まとめ
ベトナムのZ世代は、これまでの「家族のために働く」という価値観から、「自分らしい人生を送りたい」という価値観へと大きくシフトしています。
- 家族よりも自己実現を重視する人が増えている
- 出世より自由な働き方を選ぶ人が多い
- 残業よりプライベートを優先する
- お金は自分の趣味や旅行、ファッションに使う傾向が強い
- TikTokを中心としたSNS文化が定着している
- 学歴だけではなく、実践的なスキルが求められる時代になっている
日本企業がベトナム人材を採用する際は、従来の価値観を前提とするのではなく、こうした世代間の変化を理解したうえで採用・育成・定着施策を考えていくことが、これまで以上に重要になっていくでしょう。
株式会社VIT Japan 代表取締役
猪谷 太栄 氏 (Inotani Takahide)
大学卒業後、関西の大手私鉄会社に就職。その後、ベンチャー企業支援コンサルタントに転職し、アジアへの進出支援、ビジネスマッチングイベントのプロデュースも行う。2005年、上海起業家登龍門、2007年にホーチミン起業家登龍門をプロデュース。その際、ベトナムの成長可能性を大きく感じ、2010年3月株式会社VIT Japan設立。以来ベトナムにて活動中。



